SHIMANO01カルカッタ用オフセットクラッチの制作について、自分の思い入れをお話させてもらえればと思います。
反省文のようになってます(笑。
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01カルカッタ用オフセットクラッチの値段設定
みなさんこんにちは、ほぼフリッパーのかけづかです。
記事の最初から現実的なお話をしますが、今回作った01カルカッタ用オフセットクラッチは全色統一で”12000円”に設定しようと思ってます。
ガンメタとブラックをセットしてみました(^.^)
ガンメタはDC系に合うようにラインナップしたのですが、今手元にDC持ってなくてすんません
もうすぐクロームも上がってくる予定❗
全部揃ったところで抽選会やりますよー‼️#KDW #01カルコン用オフセットクラッチ pic.twitter.com/LJJVYk8G9L
— かけづか:KDW代表 (@kakedukaSS) November 8, 2019
「たかがリールパーツ1個に12000円は高いんじゃね? 」と思う人がいるかもしれませんが、自分にとってはこれが適正価格なんです。
世の中は価値の交換で、欲しいと思ってくれた人に買ってもらえればそれで良いと考えてるのですが、それでも少し値段設定について説明しておきたいと思います。説明させてください。
まず1個12000円のパーツが””100個”売れたら”120万円”、「なんだボロ儲けじゃん」と思うかもしれませんが、商売はそんな単純なものではなく(笑。
まず市場には”卸値“というものがありまして、通常メーカーから小売店への卸値って約5割から6割。強気に出てもせいぜい7割です。
つまり末端価格1万円の商品があったとしたら、メーカーから出荷される時の値段は5~6000千円なんですよ。
その差額は小売店の儲けであり、人件費や広告宣伝費など。
12000円の商品だと6掛けで7200円、5掛けで6000円となります。
01カルカッタ用クラッチの制作工程
基本デザインを考えて、3Dモデリングして3Dプリンターでサンプルを作ってフィッティング。
その後加工用図面を描いて刃物の選定・購入、加工プログラムを作って機械の段取りセッティング。
実際に削りながら微調整してようやく自動運転。
途中問題がなければ削り上がったものを検品後に表面処理業者に発送。その後光沢バレル研磨からブラスト(梨地)加工、最後にアルマイト処理して製品の完成。
完成した商品のパッケージング。パッケージデザインをイラストレーターで作りますが、まあこれはテンプレートがあるので楽ですが。
そして商品をパッケージしてようやく出荷です。
01カルカッタ用オフセットクラッチは固定用のビスも専用設計で、複合自動旋盤でステンレスを削って自社で作ってます。もちろん設計もすべて自分がやります。
ビスは緩み止め加工を施すので、削ったあとに外注先に発送。
それらをすべて管理してようやくひとつの商品が市場に出る訳で。
同時進行で他の仕事もしてますが、制作期間は数ヶ月におよびます。
その値段が1個5~6千円という感じです。
もちろん自社で売れば販売価格がそのまま売り上げになりますが、客対応から梱包発送、入金確認までやってたら身がもたない(笑。
01カルカッタ用オフセットクラッチ1個12000円ってそういう値段です。
値段設定は難しい
今回作った01カルカッタ用クラッチですが、これまで出したクラッチの中で一番高額な19アンタレス用クラッチクロームブランキングモデルより手間が掛かってまして。
19アンタレス用が売値12000円なのですが、それより高くしてしまうのは流石に気が引けます(笑。
なのでパッケージを差別化するなどして調整しようなどと。
それにしても、知ってる人は知ってると思いますが、以前同じ仕様のクラッチがHEDGEHOG STUDIOで5580円ぐらいで売られてたんです。
これ言っちゃうとものすごくマズいんですけどねー(汗。
その裏事情ですが、当時クラッチって全然知られて無くて、当然全く売れなくて。
HEDGEHOG STUDIOでもメイン商品とは考えて無くて、仕入れ値がそのまま売値になってたんですよね。
つまり完全サービス品で、「他の商品を買ったついでに良かったらどうぞ」的な位置づけだったんです(爆。
その当時のロットを買った人は本当にラッキーだったと思いますよ。自分も市場とか価格設定とか全然わかってない頃でした。
これまで作ってきたオフセットクラッチは全部そうで、時期によっては無料で旧タイプと交換したりしてました。
それはそれで凄く勉強になったし、技術的にも進歩があったのですが、商売的には全然ダメダメですよね。
永続性がまったく無い訳ですから。
この仕事で食っていくという事は、ちゃんと商売しなければいけない訳で、適正価格を見誤ると生産がストップしてしまうんです。
価格設定ってものすごく難しいんですよ。
自身ベスト3に入る傑作
01カルカッタ用クラッチを作ったのは2015年ですが、その当時に作ったとは思えない出来栄え。
というのも、当時はまだ技術的にも経験値的にも未熟だったのに、ちょっと信じられないぐらい完成度が高かったんですよ。
「コレを本当に自分が作ったのか」と疑うレベルの傑作、過去ベスト3に入るぐらいの傑作なんです。
固定用のビスを独立させるギミックは良く思いついたなーと自分でも関心しちゃいます(笑。
これによって緩みが出たら増し締めする事でガタ付きを永久的に調整できる訳ですからね。
まさにモノづくりの神様が降りてきた感じ(笑。
これまで作ったオフセットクラッチで自分史上ベスト3に入る傑作と言えば、まず『16レボ用』で、スプールとクラッチの距離を詰めるという事をはじめてやってみたんです。これはその後のクラッチ制作の軸になるほど素晴らしい施策でした(自画自賛)。
もう一つが『18バンタムMGL&19アンタレス(兼用)』で、特に18バンタムMGLについてはクラッチとの相性が抜群。他のリールに比べてもダントツにクラッチでフィーリングが変わる代表的なセッティングだと自負。
その2つと並んで最高傑作の呼声高い(自分調べ)のが、01カルカッタ用オフセットクラッチという訳です。
KDWクラッチ年表
2014頃に立ち上げたKAKEDZUKA DESIGN WORKS(KDW)ですが、何とか現在(2019年11月)まで細々と続いております。
メインの商品は年々変わってますが、ここ一年はなんと言ってもクラッチの認知度が上がって売り上げに貢献。しかしそれは苦難の歴史でもありました(笑。
ここにその苦労の年表を記しておきます。
2012年:HEDGEHOG STUDIOの社長から突然の電話。現在の仕事に梶を切る大きなターニングポイントとなる。
同年:現在の仕事の走りとなるNC切削機械(NC旋盤・小型マシニングセンター)導入。HEDGEHOG STUDIOブランドのリールパーツ制作を開始。
2013年末:自信初となるアルミ製クラッチ、『旧abuRevo LTX用クラッチ』を”2タイプ”リリース。ただしこの当時はHEDGEHOG STUDIOブランドとして販売。
2014年:SHIMANO製初となる12(09)アルデバラン用オフセットクラッチを発表。現在のクラッチのベースとなる形状になる。このクラッチが出来た事はその後のクラッチ制作に大きく影響。
この年KAKEDZUKA DESIGN WORKS立ち上げ。
同年:続けて14カルカッタコンクエスト用、13メタニウム用をリリース。基本の制作工程は09アルデバランがベースに。ただしこの時点ではクラッチはまだドレスアップパーツの域を出なかった。
さらに旧Revo用クラッチをリニューアル。初期モデル購入者には無償交換キャンペーン実施。会社が潰れかける(笑。
同年末:2015年大阪フィッシングショーに向けDaiwa用クラッチに着手。ZILLION用とTATULA用を同時にリリース。Daiwaの系リールの構造が複雑で、泣きながらフィッティング(笑。
2015年:2月の大阪フィッシングショーでこれまでのクラッチを展示。一定の評価を受けるも認知度はイマイチ。熱烈なファンの方の支持は感じるも、売り上げに大した影響はなく。
ここで『ブライトリバー』の藤原氏から01カルコン用のハイポジションクラッチの依頼を頂く。KDW初のOEM製品に着手。この時に”01カルカッタ系のオフセットクラッチ”も同時製作。
同年9月:バス釣りブログ『kakedzuka.com』開始。ただし開始当初は釣りを含めた雑記ブログだった。
2016年:名作(?)16Revo用オフセットクラッチをリリース。このクラッチからKDW製品として販売する事に。しかも値段設定を全然考えずに卸値そのままで販売するという無知の極み。それでも期待したほど売れず…。
2017年:あまりの売れなさにクラッチ制作を休止。他のリールパーツ制作に注力。この頃から過去に作ったクラッチがポツポツ売れ始め、在庫切れ商品への問い合せが続く。
2018年:ジャパンフィッシングショーで18バンタムMGLを見て触って、クラッチ制作を検討。しかしこの年SHIMANOの工場火災の影響か、左ハンドルの発売が6月までずれ込みクラッチ制作が遅れに遅れる。
同年7月:3Dモデリングが完成し3Dプリンターでサンプルを作成。それを持って琵琶湖でDeeePSTREAMのKenD氏に見せるも興味無し(爆 (その後改めて製品版をお渡ししたところ気に入ってくれて使ってもらってますhttp://deeepstream.com/2019/01/08/customclutch/)。
同年9月:『18バンタムMGL用ジュラルミン製オフセットクラッチ』のプロトが完成。納得の完成度だったが売れる予感は低く、クラッチ制作をこれで最後にしようと決意。
同年12月:18バンタムMGL用オフセットクラッチを左右合計100個、HEDGEHOG STUDIOのホームページでゼロ円販売企画発動。これが46秒で完売‼️
2019年:18バンタムMGL用オフセットクラッチのゼロ円企画後に初期ロットが完売。発売2週間で追加生産決定!!
同年2月:『16メタニウムMGL(13/15DC兼用)』用オフセットクラッチ・リニューアルバージョンを発表。かけづかのTwitter上にて左右合計100個無料プレゼント企画発動。過去最高の応募数。一気にKDWオフセットクラッチの認知度が上昇(したように感じる)。
この年のフィッシングショーでSHIMANOから『19アンタレス』が発表される。Twitterのフォロワーさんから18バンタムMGLとの互換性があるとの情報を得る。
同年5月:19アンタレス左ハンドルリリースに合わせて『KDWオフセットクラッチ・クロームブランキングバージョン』をリリース。過去最高価格にかかわらず順調な売れ行き。
この頃になると過去のオフセットクラッチへの問い合わせが以前にも増して多くなり、自分の作ったクラッチへの認識の甘さに気付かされる。
2019年11月現在:約5年の時を経て01カルカッタ用オフセットクラッチ復刻!!
さいごに
ブログ仲間のツリラクさんが以前記事にしてくれてたのですが、01カルカッタ用クラッチの初期ロットは長い間欠品状態でした。というか、もはや廃盤と思われてもしかたないほど(苦笑。
[blogcard url=”https://tsuriluck.com/2017/12/16/clutch1”]そんなツリラクさんには切削途中の半製品を磨いて先にお渡ししてました。2年前から01カルカッタ用クラッチを熱望されてた1人でしたし、ブログを通じて何度かお会いしたりして仲良くなってましたからね。
基本的にコアなユーザーさんには贔屓するスタイルです(爆。
そんな01カルカッタ用クラッチも初期ロット発売直後は本当に売れなくて、でも不思議な事に発売後1年ぐらいしてから段々と売れ始め、完売してからは良くお問い合わせ頂いてました。
これは18バンタムMGL用を出す前までの全モデルに共通してます。それだけ宣伝広告をサボってたと言えますよね(超反省)。
18バンタムMGLの時に痛感したのですが、ちゃんと欲しい人のところに正確な情報が届いてなかったんだなと。
2015年の秋からブログを始め、大御所ブロガーさんに紹介頂いたり、たまたまタイミングも良く多くの方に読んでもらえるようになって少しだけ”カケヅカ”の知名度が上がりました。
その後Twitterを本気で運用しはじめ、製品情報を当時より多くの方にお届けできるようになりました。
そこでユーザーさんが自発的に製品を宣伝してくれて、色んな事が一気に動き出したように感じてます。
01カルカッタ系リール(DC含む)のユーザーさんは自分が思ったよりもまだまだ沢山いるようで、今回のオフセットクラッチには多くの反響を頂いてます。
モノづくりと販売と宣伝広告は全部セットなんだとユーザーさんに教えてもらったようなモノですね。
これからはサボらずに制作工程や製品情報をマメに発信していきたいと思います。
今後ともどうぞ宜しくお願いします。
では。
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