バス用ベイトリールのクラッチレバーをメタルで作った数は世界有数だと自負してます。
そんな自分が考える、使いやすいクラッチとは。
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リールカスタム最後のピース
こんにちは、ほぼフリッパーのかけづかです。
リールカスタムパーツを作る事を仕事にして丸5年経ちましたが、ここ一年はカスタムクラッチレバーが良く売れてくれます。ありがたやー。
しかし自分で作っておいてナンですが、クラッチってリールカスタムの中でも”最後の最後に交換するパーツ”だったのではないかと思ってまして。メタルで作ったクラッチはお値段が結構いっちゃいますからね(汗。
以前まではクラッチレバーって単なるドレスアップパーツとしてしか見られてなかったと思うんですよ。実際自分で作った初期の作品は正直機能面はあまり考えてませんでした。
それが今となっては、使用感の向上に影響する重要なパーツであると自信をもって言えるほど色々と作り込んできたんですよね。
そこで自分が考えるベイトリールのクラッチレバーについてアレコレ語ってみたいと思います。
クラッチレバーは高さより角度が重要
2020年はダイワ製リールのクラッチをできるだけ多く作りたいと思ってまして、現在その構想にムフフとなってるところです。
まずは手元にあるスティーズATWのクラッチから作る予定ですが、Daiwa製ベイトリールは全体的にクラッチの位置が低めですね。
これはabuのレボシリーズにも言えるんですが、クラッチレバーがより低い方が切りやすいと考えてるのかもしれません。
しかしながら自分としてはクラッチの切りやすさは”クラッチポジションの高低”だけではないと考えます。
乱暴な言い方をすれば、クラッチは高さよりも角度の方が超重要だと感じてまして。
これまでKDWとしては、ほとんどSHIMANO製ベイトリールのクラッチを作ってきたのですが、Daiwa/abuにくらべてクラッチの位置は高く指を置く面は水平部分が多い。
これは手の小さい自分には凄くクラッチ操作がやり難いんです。
なので少しでもクラッチの位置を低くしたいと思って数々のプロト品を作ってみたのですが、フレームに干渉しないギリギリまで低くしても切り難かったんですよね。
そこで指を置く位置を曲面にして角度を付けてみたら、これがビンゴでした。
真っ平らや窪んでるよりも、外に向かって曲面になってる方が自分は凄く良い感触だったんですよね。
凹凸どちらが切りやすいのか問題
KDWのクラッチレバーの基本形は凸型の曲面です。でも指が触る面積を多くするなら凹型の方が良いですよね。
でも敢えて凸型にしてるのは、クラッチを切る前と切った後で指の位置が変わる事を考慮してます。
②スプールを押さえる
③バックスイング
④フォワードスイング
⑤指をスプールから離してサミング
⑥ルアーが着水
⑦スプールを指で押さえる
⑧ハンドルを回してクラッチを戻す
とまあ大体こんな感じですが、一回のキャストの中でもクラッチを触る指の位置は微妙に動いてるんですよね。
最初凹型で作ったのですが、指の自由が効かないと感じて逆の曲面したら凄く良い感じで。
人によっては触り心地が合わない場合があるとは思ったのですが、そこはカスタムパーツです。無理に交換する必要が無い訳ですから、自分が良いと思った形で作ろうと決断しました。
こうして外Rの曲面というKDWの基本形ができました。
クラッチレバーの面積が小さい問題
16REVO LTX-BF8のクラッチを作る時の事です。ノーマルのクラッチレバーが小さいと感じてました。
ただ誤解して欲しくないのですが、リールカスタムはノーマルより性能をアップさせる事では無いとかんがえてまして。けっしてノーマルリールをディスるつもりはありません。
あくまでも自分専用機を作るというコンセプトなので、すべての人に使いやすいモノを作ってるという訳ではありません。
話が逸れました(汗。
16REVO LTX-BF8のクラッチですが、ベイトフィネス専用機という事で軽いルアーをキャストする事が多いですよね。なのでより繊細なサミングをしやすくしたいと考えました。
サミングをする時に、切った状態のクラッチレバーの上に指を置きますが、その部分が小さいと”スプールに触るか触らないかのコントロール”がやり難いと感じたんですよね。
ここは軽さを犠牲にしてでも面積の大きなクラッチレバーにしたいと。軽さは肉抜きで相殺すれば良いし、デザイン的にもその方が映えるだろうと考えました。
でも大きな肉抜きをしたら指の肉が入り込んで具合が良くなかったんですよね(苦笑。
色々作ったプロト品の中で、ぶっちゃけ肉抜き無しのモノが1番触り心地が良かったんです(笑。
そこで肉抜きは最低限にして、裏面を大きく削る事で軽量化しながら、指を置く面を広く取る事でサミングのしやすさを実現しました。
このクラッチはその後作る多くのモデルに大きな影響をもたらす事になります。
クラッチとスプールが遠い問題
2018年にSHIMANOから発売された18バンタムMGLのクラッチが自分的にすごく不満でした。クラッチの位置が高すぎるだけでなく、スプールから離れててサミングがやり難かったんですよね。
そこで16REVO LTX-BF8の時の経験を活かして、思い切ってスプールとクラッチレバーを近づけてみたら、これが凄く良くて。
3Dプリンターで作ったプロトは樹脂なので強度がなく撓みが気になりましたが、メタル製なら問題ありません。
その他18バンタムMGLのクラッチについては過去記事で色々書いてるので割愛しますが、クラッチとスプールの距離については近ければ近いほどサミングがやりやすいと考えてます。
今後作るクラッチについては、スプールとの距離感を意識してもらえるとKDW製クラッチの意図するところを感じてもらえるのではないかと。
そしてDaiwaリールのクラッチ
自分は普段SHIMANOリールを好んで使ってるのですが、abuもDaiwaも絶対に使わないと言う訳ではもちろんありません。
むしろこんな仕事をしていて同一メーカーしか使わないのは怠慢以外の何者でもないですよね。
ただ、正直に申し上げて自分はリールの事をそこまで深くわかってないと思ってまして。こんな仕事をしていて何を言ってるのかと思われるでしょうか。
でも本当にリールの構造って凄く難しくて、新しいパーツを作るたびに発見の連続なんです。
なのでSHIMANOリールのクラッチを作っていて、やっと機種の違いやメーカー特有の構造を少しだけ理解できてきたかなと。
そこでやっと重い腰を上げてDaiwaリールのクラッチですが、じつは過去にダイワ製のクラッチは作ってました。ただそれがメチャ大変だったんですよね。
何が大変か。それはリールの構造的に、クラッチのフィッティングには結構深い部分までリールをバラさないといけないという部分です。
特にTWS系は部品の点数が多くて、バラした後の管理に凄く気を使います。
でもでも、2020年はクラッチ制作のために大きな投資をしたので、楽しみな部分の方が大きいんですよ。
スティーズA TWのクラッチに求める事
Daiwa製クラッチを再び作る決心(大げさ)をした訳ですが、最初に作るのはスティーズA TWになります。
そこでスティーズA TWのカスタムクラッチの構想というか方向性を確認しておきましょう。
まずクラッチレバーが小さいので、指を置く面を広くしたい。そしてノーマルよりスプールに近づけたい。
クラッチポジションは低いので、これ以上下げる必要は感じません。
何より1番の拘りは、左右非対称で作りたいと思ってます。
リールカスタムって絶対ではなくて、無いなら無くても困らないものというのが自分的な位置づけ。
だったら思いっきり尖ったもので良いし、万人受けを狙う必要は無くても良いかなと。
まあそうは言ってもあまりにダサいものは売れない訳で、機能と見た目の両方でユーザーさんを納得させないとダメですからね。
そこはじっくり詰めたいと思います。
さいごに
紆余曲折色々あって現在の考え方に落ち着いたKDW製クラッチレバー。これをカスタムするなんて普通は考えた事がないパーツだと思います。
クラッチとしてだけ機能させるなら、もっと安く大量に作れると思いますが、それではカスタムパーツとして面白く無い。
リールによってはユーザーさんが何の不満も無い機種もあると思いますが、そこをひっくり返すのが作り手として快感だったりします(笑。
自分としては2016年に作った16REVO LTX-BF8用クラッチがターニングポイントだったなと。その後あまりの売れ無さに2年ほどクラッチ制作から遠ざかり、18バンタムMGL用オフセットクラッチでブレイクした感じでしょうか。
自分にとってのカスタムクラッチは、カスタムパーツ屋として何とか格好が付いた代表作であり、KDWの売り上げを支えるメイン商品です。
モノ作りを生業にする者として、思い入れの深い製品になりました。
当面の目標はより多くの機種に対応したクラッチを作る事です。メーカーや機種の年代を問わず、できるだけ沢山作りたいと思ってます。
スプールやベアリングに負けないぐらい、リールの性格を大きく変える重要なパーツというポジションを確立したいですね。
では。