『hinata HANGING PEN(ヒナタハンギングペン)』を完成させて思う事

いやー、良いもの作っちゃいました。

この度KDW初の他業種商品として、マシンカット文房具『hinata HANGING PEN』を制作いたしました。

まったく釣りに関係ない商品ですが、謎に凄くモチベーション高くデザインから設計製作までやらせてもらいまして、そこに対する思い入れのようなものも合わせて商品説明をさせて頂けたらと思います。

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アウトドアシーンに映える文房具?

こんにちは、かけづかです。

『自分が欲しいものを自分で作る』が基本コンセプトだったKDW(KAKEDZUKA DESIGN WORKS)ですが、この度釣りと全く関係ないどころか、おおよそKDWのイメージからかけ離れた商品、『hinata HANGING PEN』を制作いたしました。

hinata HANGING PEN1

ジュラルミン削り出しボールペン・hinata HANGING PEN(ハンギングペン)。

こちらの商品は『アウトドアシーンに映える文房具』という、最初に聞いた時には「は?」というコンセプトでした。

ボールペンです。

 

話が前後しましたが、つまり今回釣り業界ではなく異業種の会社さんからの案件でやらせて頂きました。

依頼元はキャンプを中心としたアウトドア用品の販売を手掛けるhinataという会社。

hinata

キャンプ好きの方なら知ってる人も多いかもです

自分が過去に作ってきた製品や過去のブログSNS等を見てくださり、担当の方の地元が同じ足立区という事で意気投合。

話を聞かせてもらううちに、釣り好きな自分といろいろ共通点があるなと。

まあ大きな括りで釣りもキャンプも同じアウトドアだし、外で遊ぶ男の子は大体価値観が近いみたいです(笑。

そしてなにより、ぜひこちらにお願いしたいという真摯な態度、ちゃんとお金の話を最初にしてくださる誠意ある対応に心が動かされました。

やりましょう‼️

(いやお金がどうのじゃなく自分をちゃんと評価してもらった事が嬉しかったんですよ)

お題はあれど

コンセプトがアウトドアシーンでも映える文房具という事で、敢えて女子ウケをガン無視で無骨なデザインにして欲しいとのご要望。良いのかそれで。

そもそもキャンプ等のアウトドアの最中に文字やら絵を書く事なんてあるんか?

いやいや、そういうのを考えたら負けなんですよ(謎。

釣りって何の役に立つの?って聞いちゃうぐらい負けです。

何ならこれまで釣り道具にいくら使ったの?って聞いちゃうぐらい…(ちょっと胃が痛くなってきた。

つまりそういう事じゃないんです。欲しいって本能だから、欲しい事に理由なんてないんですよ。

アウトドアシーンで使うものにはそれっぽいギヤ感を漂わせたい』で良いじゃないですか。嫌いじゃないですそういうの。

さて作るか

正式に案件としてお話を頂いてから、着手まではすぐでした。だって楽しそうだから。

作りたいと思ったら他を止めてでもそれを進めてしまうポンコツっぷりなのはみなさんご存知の通り。

結構なスピード感でデザインと設計を同時に進めます。同時というのは図面を書く段階で機械加工工程を想定しながらという事ですね。

HANGING PEN

ノッた時は仕事が早い(笑。寸法は伏せてますが、あっというまに4部品の図面を書き上げます。 まあ色んな雑務と兼任なので実は数日掛かってますが…。

大体商品の製造ってデザイナーさんから設計士さん、図面オペレーターさん、機械のオペレーターさんという具合に分業だと思いますが、自分の強みはそれらを一人でこなせる事。

完成品をイメージしながら機械加工が可能な範囲で逆算のデザインをするので、図面にする時点で現実的に加工可能な状態になってるという訳です。

大きな会社だとデザイナーさんと図面書く人は大体揉めるって聞いた事ある…(多分実話。

4部品構成

ここからはちゃんと?商品のお話。

今回のハンギングペンは市販のボールペンの芯を流用します(販売元のメーカーには承諾を頂いてるそうです)。

大げさではなく一生、それどころか子どもや孫の代まで使ってもらえるぐらい屈強なギヤとして設計してます。

クライアントさんの要望として、キャップは絶対欲しいとの事と、ローレット加工を随所に施して欲しいとの事。

拘るなー。

最初はなるべく部品点数少なくしようと思ってたのですが、どうしてもパーツを4つに分ける必要があり、うち3つのパーツにローレット加工を入れる羽目に(汗。

なんだかんだ自分も拘ってしまい、気がついたら楽しくなってきて制作に没頭してました。

HANGING PEN4

この手の仕事の一番始めにやることはネジのハメ合いをしっかり作る事。オスメスのどちらかを先に削ってしまうと、後から大惨事になってしまうので(過去に何度も経験あり…。

この手の製品で一番大変なのはローレット加工と見せかけて、実はネジのハメ合いでした。

キャップはネジピッチが粗いとすぐに外れて落としてしまう恐れがあると思い、M10のJIS規格では1.5mm(山から山までの距離)のところ、0.5mmピッチと細か目に設定。

これはリールパーツを作ってる時の経験が役にたちました(微調整をするメカノブキャップと同じピッチにした)。

HANGING PEN3

割とスピーディーにファーストサンプルの形が完成。この時点でかなり完成品に近い仕上がりでした。

HANGING PEN6

そして試作カラーをアルマイト。もう既にメチャクチャ良い感じ!この中からどれか一色になる予定でした。どれも捨てがたい…。

 

そして完成!

HANGING PEN7

カラーについては検討に検討を重ね、マットブラックとマットガンメタが採用されました。

当初カラーはどれか一色になる予定でした。たしかガンメタが採用と聞いてたのですが、ブラックがあまりにも良いので、無理やり?2色展開になったそうです。

そして1個1個慈しむように組み立て。

HANGING PEN8

従業員総出で組み立て&パッケージング作業。

検品で跳ねたものもありましたが、無事に初期ロット出荷となりました。

ふー。

ギヤっぽい文房具

アウトドアシーンでこんなボールペンを使ってる人をこれまで見たことがなかったので、文房具にギヤ感を求めるという発想が全然ありませんでした。

でも例えば自分のように釣りが好きな人は普段から細かい部分まで無意識に釣り感が出てしまってる事ってあると思うんですよね。

着るものや身に付けるものが釣りメーカーのものだったりとか。

そう考えた時に、キャンプを含めたアウトドアの遊びを本気でやってる人だと、普段使いの細かいものでもギヤ感を出したくなるものなのかもしれないと謎に納得してしまいます(笑。

リュックに下げてる時にはまさかこれがボールペンだとは気づかれないと思いますが、キャンプ中とかに何かでちょっとメモをとる事があったとして、さりげなくこれを出したらなんかカッコ良いんじゃないかと思えてくるから不思議ですね。

アウトドアシーンだけじゃない

さてここからは制作者としての自分目線で語りたいと思います。

今回作ったハンギングペンですが、キャンプ等のアウトドアシーンでも映えるギアというコンセプトでデザインされたものです。

ただ、自分は普段も使ってますし、依頼された会社の担当の方も普通に普段使われてるそうです。

使う時に必ずキャップを外す必要があるので安価なノック式ボールペン等と比べると決して使い勝手は良いとは言えません。

HANGING PEN

安価なボールペンと比べてみると、見るからに重厚感。

でも逆にそれが良い場面というのはあると思っていて、その人にとって大事な場面で敢えてこのペンを使う事で集中力を高めたり、大事な事を再確認できたりするってあると思うんですよね。

HANGING PEN9

釣りの前のボート代の支払い時。無人の受付けですが、こういうシーンで大事な事を書く時に使いたい。 (画像はサンプルで作ったKDWバージョンです。もちろん非売品)

重要な書類に押す実印てわざと上下がわからなく作ってあると聞いた事がありますが、あれって「本当にこの書類に判子を押して良いんだろうか」と考える”間”を作るためらしいです。

今回のHANGING PENもそれに近くて、ビジネスシーンでの大事なメモやサインをする時に、敢えてこういうペンを出して、そしてゆっくりキャップを回して外し、その動作と共に集中力を高める、なんて使い方もアリなんじゃないかと思ったり。

さいごに

そんな訳で無事完成したhinata HANGING PEN。

もうすでに市場で販売されてます。

この手のものは海外で大量生産すればもっと安く沢山作れると思いますが、敢えてうちのような小さい工場に依頼してくれて、デザインから設計製造を任せて頂きありがたい限りです。

こちらも一生懸命、そして楽しく作らせて頂きました。

自分が普段作ってるリールのカスタムパーツとは違いますが、使う人の顔がハッキリとイメージできる商品はやりがいがあります。

自分はキャンプはしませんが、いつも持ち歩いて「今だ!」という時にこれを出すのを楽しみにしています。

もちろん釣りにも持っていって、自分にとって大事な場面で使いたいと思ってます。

今はなんでも安く大量に作れる時代ですが、足立区の町工場のオッサンが作ったちょっと使い難くて無骨なボールペン。

きっと色が剥げたり傷だらけになったとしてもカッコ良いんじゃないかと思いますので、ぜひ1本手にとってもらえると幸いです。